宇治の大君～薫の思い人：源氏物語・宇治十帖～

紫式部「光る君へ」

宇治の大君
薫の思い人：宇治十帖・源氏物語

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　大君（おおいのきみ）は、紫式部の『源氏物語』の登場人物。

　光源氏の異母弟・八の宮の娘。

　「宇治十帖」で光源氏の次男・薫の思い人として登場する。

　大君は、父の八の宮と妹の中の君とともに宇治の山荘で暮らしていた。

　宇治の山荘は、宇治上神社がモデルともいわれる。

　八の宮は、桐壺帝の第八皇子。

　光源氏が須磨・明石に蟄居している間、異母兄の朱雀帝が即位すると・・・

　朱雀帝の母・弘徽殿女御は、東宮（のちの冷泉帝）を廃して八の宮を擁立しようとしたが失敗。

　そのため八の宮は、光源氏の権勢の中で忘れられた存在となり、邸宅が焼失してしまったことを機に姫君たちとともに宇治に隠棲していた。

橋姫神社
（橋姫の古蹟）

彼方神社
（椎本の古蹟）

　橋姫神社は宇治橋の守り神。

　「宇治十帖」ゆかりの橋姫の古蹟。

　彼方神社は、「宇治十帖」ゆかりの椎本の古蹟。

～悲しい最期～

　宇治の山荘で仏道修行をしている八の宮のところに通っていた薫は・・・

　有明の月の下で箏と琵琶とを合奏する大君・中の君の姉妹を垣間見て、美しく優雅な大君に心惹かれる。

　八の宮の死後、薫は匂宮（光源氏の孫）が中の君を慕っていることを語り、自分の恋心を大君に話すのだが・・・

　大君は、薫のことを慕う気持ちがありながらも、中の君を薫と結婚させようと考えていたため、薫を拒み続けた。

　しかし、薫は匂宮を手引きし、中の君と結婚させてしまう。

　さらに、中の君と結婚した匂宮は、その身分から宇治に通うことは難しく、夕霧（光源氏の長男）の六の宮との結婚の噂まで耳にしてしまう。

　心を痛めた大君は病となり、薫の手厚い看護もむなしく死去。

※	六の宮は夕霧の側室・藤典侍の産んだ子で、朱雀帝の第二皇女・落葉の宮の養女。

総角の古蹟

　総角の古蹟は、「宇治十帖」ゆかりの地。

　「宇治十帖」の総角の巻のタイトルは薫が恋をした大君に詠んだ歌にちなむもの。

二条院

　大君の死後、妹の中の君は匂宮の二条院に移っている。

～異母妹・浮舟～

　大君の死後、「宇治十帖」には『源氏物語』の最後のヒロインとなる浮舟が登場する。

　浮舟は大君と中の君の異母妹。

　浮舟が薫と匂宮との間で苦悩の末に出家して『源氏物語』は幕切れとなる。

～宇治十帖に登場する越前国武生～

紫式部公園
（越前市）

　「宇治十帖」には、紫式部が娘時代を過ごした越前国武生も登場する。

　浮舟の巻では、宇治から帰京する浮舟の母は、

　｢たとえあなたが、遠い武生の国府のような所へ行ってしまったとしても、こっそりとお伺いしましょう・・・｣

　と浮舟を慰めている。

　手習の巻では、浮舟を救った横川の僧都の母・大尼君が

　「たけふ、ちちりちちり、たりたむな」

　と口ずさんでいる。

　紫式部公園は、紫式部が越前国に下向したことを記念して整備された公園で、平安朝式庭園が再現されている。