鎌倉手帳(寺社散策)

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源頼朝像と善光寺

編集:yoritomo-japan.com








甲斐善光寺源頼朝像
甲斐善光寺の源頼朝像


 甲斐善光寺に伝えられる「木造源頼朝坐像」は、もとは信濃善光寺にあったもの。

 1558年(永禄元年)、武田信玄は信濃善光寺の本尊善光寺如来をはじめとする寺宝を山梨郡板垣郷に移した。

 源頼朝像もこの時に甲斐国へ運ばれたものと考えられる。

 「文保3年」(1319年)の銘があるもので、源頼朝の最古の彫像といわれ、銘文には、頼朝の命日である「正治元年正月13日」という日付も確認されており、頼朝の彫像であることは間違いないとされている。

 また、「尼二位」の文字も読み取れることから、北条政子が造らせた像ではないかとも。

 「文保3年」の銘については・・・

 1191年(建久2年)、頼朝によって再興された信濃善光寺は、再興後二度の火災に見舞われており、その時に受けた損傷を修理した年と考えられている。

 北条政子が造らせたという説とあわせて考えれば、頼朝が亡くなった1199年(正治元年(建久10年))から政子が亡くなった1225年(嘉禄元年)の間に造像され、その後修理が施されたということなのかもしれない。

 のちに善光寺如来をはじめとする寺宝は信濃善光寺に戻されるが、源頼朝像は甲斐善光寺に残された。


武田信玄が甲斐に善光寺を移したのは、合戦による焼失をおそれたためだという。

政子は1218年(建保6年)に従二位に叙せられている。





〜解体修理〜


 2020年度(令和2年度)の解体修理で炭素年代測定が行われ、体部の木材は1318年(文保2年)から翌年にかけて伐採されたものという結果が得られ、体内銘の年と合致。

 この修理では、失われていた玉眼が入れられた。









〜信濃善光寺を再興した源頼朝〜

 『吾妻鏡』によると・・・

 1187年(文治3年)7月27日、源頼朝信濃善光寺を再興するため、信濃国の荘園や公領の執行者に、勧進上人に協力して土木人夫を提供するよう命じている。

 当時の信濃善光寺は、創建が古いことから堂宇は壊れ、1179年(治承3年)には火災に遭い、礎石だけが残されている状況だったのだという。

 そして、1191年(建久2年)10月22日、再建された信濃善光寺で供養が行われている。

 もしかすると、頼朝も参列する予定だったのかもしれないが、この年の3月、鶴岡八幡宮が焼失(建久2年の大火)するという事件があったため、無理だったのかもしれない。





〜頼朝の善光寺参詣〜

 肥後国人吉藩(ひとよしはん)の相良家に伝えられた相良家文書の「源頼朝善光寺参詣随兵日記」には、1197年(建久8年)3月23日、九州の御家人であった相良四郎が随兵したことが記されているのだという。

 『吾妻鏡』では、頼朝が参詣したとされる1197年(建久8年)の記事が欠落しているため確認はできないが、参詣を予定していた記事は確認できる。

 1195年(建久6年)8月2日、頼朝は、鶴岡八幡宮の放生会を終えたら、信濃国の善光寺を参詣することを発表。

 しかし、8月23日には、寒くなってくるという理由から春に延期されている。

  その後どうなったのか『吾妻鏡』からは確認できないが、頼朝は東大寺大仏殿落慶供養から帰ってすぐに信濃善光寺の参詣を計画していることから、大きなイベントとして考えていたのかもしれない。





〜源頼朝の善光寺参詣伝説〜

善光寺の駒返り橋
リンクボタン駒返り橋
(信濃善光寺)





〜参考:源頼朝の容姿って・・・〜

源頼朝
リンクボタン頼朝の容姿

写真は東京国立博物館の源頼朝像。





〜頼朝杉による頼朝像〜

智満寺
リンクボタン智満寺
(静岡県島田市)

 2012年(平成24年)に倒木した智満寺の頼朝杉を使った頼朝像が2022年(令和4年)に完成。

 各地での特別公開後、鶴岡八幡宮に奉納される予定だったが・・・

 安置場所の関係から見送りとなっている。


智満寺の頼朝杉と源頼朝像


源頼朝像と厨子
リンクボタン源頼朝像と厨子

 2022年(令和4年)11月23日、伊豆の国市の韮山文化センターで公開された源頼朝像と厨子





〜武田信玄と上杉謙信の戦い〜

武田信玄と上杉謙信
リンクボタン川中島古戦場





〜源実朝像も国内最古〜

甲斐善光寺源実朝像
リンクボタン源実朝像

 源頼朝像とともに信濃善光寺から甲斐善光寺に移された源実朝像も国内最古の彫像と判明している。





2022年(令和4年)
善光寺前立本尊御開帳
リンクボタン信濃善光寺御開帳









信濃善光寺

甲斐善光寺


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